日本語版 / 第三章

 
王様は、何も考えずに教会の中へ入っていった。

「ここにいたい。」王様は言った。

周りには、灯のついていないろうそくがたくさんあった。

王様は、指でタップした。

すると、すべてのろうそくに灯がともった。

そう。王様には特別な力があったんだ。

彼は何かを思い出そうとしていた。

その昔起こった、何か特別なこと。

結婚だった。

彼は立ち上がって、ヴァージンロードの方向へ歩いていった。

目を閉ざして、彼は妻の顔を思い出していた。

「あぁ、君がいなくてさみしいよ!」王様が言った。

「誰かそこにいるんですか?」誰かが言った。

「失礼。私だよ。」王様が言った。

「ろうそくは消えてると思ったんだけどな。」その男が言った。

「気に入らなければ、灯は消すよ。」王様はそう言うと、再び指でタップした。

「ろうそくの灯、消えろ!」王様が言った。

すると突然、すべてのろうそくの灯が消えた。

教会の外では、ものすごい雨だった。

また雷が教会を撃った。

誰かが叫んだ。

「どうしてこんな登場のしかたなのよ!」」ひとりの女性が言った。

「ごめんよ。」王様が言った。「寂しかったんだ。」

「ここにいない? 教会の中に。」王様が言った。

「心の中で、君に向けて、『寂しいよ』って言ったんだ。」王様が言った。「そしたら君が現れた。」

「地上では気をつけてね。あなたには特別な力があるんだから。」その女性が言った。

「そうみたいだね。」王様が言った。

「すみませんが、もしよろしければ、もう少しここにいたいんですが。」王様が言った。

「灯りはつけてですか?」その男が言った。

「はい?」彼はまたタップをした。

「ミュージック、スタート!」王様が言った。

パイプオルガンが、彼の好きな音楽を奏で始めた。

王様は、クラシックが大好きだった。

とくに、バッハ。

「言っとかなくちゃいけないことがあるんだけど。」王様が言った。

「だめ。地上では聞きたくないわ。」女王が言った。

「わかった。じゃ、心にとどめておくね。」

「はやく娘の顔を見たいよ。」王様が言った。

「ケイティーのこと?」女王が言った。

「うん。」王様が言った。「寂しい。それに、ジョーはどこに行っちゃったのかな。」

彼の指が何かに触れた。

雷が二回、また教会を撃った。


「教会で何が起きているでござろうか。」ウェルターが言った。

一時間に四回も教会に雷が落ちたのだ。

何かおかしなことが起こっているに違いない。

ケイティーはどこへ行ったのか。

彼は、教会へ飛んで行こうとした。

激しい雨が地面を打っていた。

彼は飛べなかった。蚊だったのだ。


ところで、王様はケイティーとそっくりの目をしていた。

深い緑で、それはまるで彼女が生まれた森みたいだった。

そしてその瞳は、深い優しさと、もの寂しげな輝きを宿していた。

天上では、彼は王のように振舞ってきた。もちろん。

しかし下界では、彼は孤独を感じるひとりの男にすぎなかった。

彼には、どうしても生前に起こったことが忘れられなかったのだ。



つづく。
 
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